学校いじめ防止基本方針
令和5年4月
島根県立浜田ろう学校
1.はじめに(学校いじめ防止基本方針とは?)
「いじめ」は、冷やかしやからかいなどの他、情報機器を介したいじめ、暴力行為に及ぶいじめなど、学校だけでは対応が困難な事案も増加している。また、「いじめ」をきっかけに不登校になってしまったり、自らの命を絶とうとしてしまったりするなど、深く傷つき、悩んでいる児童生徒もいる。いじめの問題への対応は学校として大きな課題である。
そこで、児童生徒達が意欲をもって充実した学校生活を送れるようにいじめ防止に向け、日常の指導体制を定め、「いじめ」の未然防止を図りながら、「いじめ」の早期発見に取り組むとともに、「いじめ」を認知した場合は適切に且つ速やかに解決するための「学校いじめ防止基本方針」を定める。
2.「いじめ」の定義と基本的な考え方
(1)「いじめ」の定義
「いじめ」とは、児童生徒等に対して、当該児童生徒等と一定の人的関係にある他の児童生徒等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒等が心身の苦痛を感じているものをいう。
(2)「いじめ」に対する基本的な考え方
- 「絶対に許されない」、「いじめる側が悪い」との認識
- 「どの児童生徒にも、どの学校においても起こり得る」との認識
- 「未然防止は、学校・教職員の重要課題」との認識
(3)「いじめ」の構造と動機
- 「いじめ」の構造
「いじめ」は、『いじめられる児童生徒』、『いじめる児童生徒』だけでなく、『観衆』・『傍観者』などの周囲の児童生徒がいる場合が多い。周囲の児童生徒の捉え方により、抑止作用になったり促進作用となったりする。 - 「いじめ」の動機
動機には、以下のものなどが考えられる。- 欲求不満(...いらいらを晴らしたい)
- 嫉妬心(...相手をねたみ、引きずり下ろそうとする)
- 嫌悪感(...感覚的に相手を遠ざけたい)
- 反発・報復(...相手の言動に対して反発・報復したい)
- 支配欲(...相手を思い通りに支配しようとする)
- 愉快犯(...遊び感覚で愉快な気持ちを味わおうとする)
- 同調性(...強いものに追従する、数の多い側に入っていたい)
(4)「いじめ」の態様
態様には、以下のものなどが考えられる。
悪口を言う・嘲る、陰口、 噂流し、メール等による誹謗中傷、避ける、無視 、ぶつかる・小突く、嫌がらせ、授業中のからかい、仲間外れ、命令・脅し、暴力 落書き・物壊し、たかり、使い走り、性的辱め、部活動中のいじめ など。
3.いじめ防止のための指導体制と組織的対応
(1)日常の指導体制
「いじめ」を未然に防止し、早期に発見するための日常の指導体制を以下の通りとする。
- いじめ防止委員会の組織と運営
- メンバー : 校長・教頭・生徒指導主事・各学部主事(6名)
- 開催 : 年4回以上、原則4月、各学期末に行う。
- 主な議題 :
〇『学校いじめ防止基本方針』の共通理解・見直し
〇いじめ防止に関わる年間計画の作成・共通理解・見直し
〇いじめ防止につながる校内研修会の企画・立案 等 ○各学期のいじめの状況についての共通理解
(2)「いじめ」を認知した場合の組織的対応
認知した場合、「いじめ」の解決に向けた組織的な取組を以下の通りとする。
〇いじめ対策委員会の組織と対応
「(別紙1)「認知した際の組織的対応」」(PDF:59kB)を参照。
4.検討したい予防のための観点
「いじめ」の問題への対応では、「いじめ」を起こさせないための予防的取組が求められる。学校においては教育活動全体を通して、自己有用感や規範意識を高め、豊かな人間性や社会性を育てることが重要である。
(1)学業指導の充実
- 規範意識、帰属意識を互いに高める集団づくり
- コミュニケーション能力を育み、自信を持たせ、一人一人に配慮した授業づくり わかる授業の展開
- 情報モラル教育の充実
(2)自立活動の充実
- 障がいからくる個々の課題の把握及び指導計画、実践の検討
(3)特別活動、道徳教育の充実
- ホームルーム活動における望ましい人間関係づくりの活動
- ボランティア活動の充実(誰かのためや公のために役に立つ活動)
- 人権意識の高揚
(4)教育相談の充実
- 面談の定期的実施
(5)保護者・地域との連携
- いじめ防止対策推進法、学校いじめ防止基本方針等の周知
- 学校評議員との意見交換
- 学校公開の実施
- 学校評価アンケート結果の活用
5.検討したい早期発見のための観点
いじめ問題を解決するために最も重要なポイントは、早期発見・早期対応である。児童生徒の言動に留意するとともに、何らかの「いじめ」のサインを見逃すことなく発見し、早期に対応することが重要である。
(1)「いじめ」の発見
直接発見した場合、その行為をすぐに止めさせるとともに、いじめられている児童生徒や通報した児童生徒の安全を確保する。『認知した際の組織的対応』により速やかに報告し、事実確認をする。
(2)いじめられている児童生徒・いじめている児童生徒のサイン
→ 「(別紙2)「児童生徒からのサイン」」(PDF:46kB)を参照。
(3)教室でのサイン・家庭でのサイン
→ 「(別紙3)「教室でサイン・家庭でのサイン」」(PDF:51kB)を参照。
(4)相談体制の整備
- 相談窓口の設置と周知
- 面談の定期的実施
(5)定期的調査の実施
- アンケートの実施(各学期末に行う)
(6)情報の共有
- 報告経路の明示、報告の徹底
- 職員会議等での情報共有
- 要配慮児童生徒の実態把握
- 進級時の引き継ぎ
6.共通理解しておきたい認知した後の対応
(1)児童生徒への対応
- いじめられている児童生徒への対応(被害児童生徒への対応)
いじめられている児童生徒の苦痛を共感的に理解し、心配や不安を取り除くとともに、全力で守り抜くという「いじめられている児童生徒の立場」で継続的に支援することが重要である。- 安全と安心を確保する。
- 心のケアを図る。
- 今後の対策について、ともに考える。
- 活動の場などを設定し、認め、励ます。
- 温かい人間関係をつくる。
- いじめている児童生徒への対応(加害児童生徒への対応)
「いじめ」は決して許されないという毅然とした態度で、いじめている児童生徒の内面を理解し、他人の痛みを知ることができるようにする指導を根気強く行う。- いじめの事実を確認する。
- いじめの背景や要因の理解に努める。
- いじめられている児童生徒の苦痛に気付かせる。
- 今後の生き方を考えさせる。
- 必要がある場合は懲戒を加える。
(2)関係集団への対応
被害・加害児童生徒だけでなく、面白がって見ていたり、見て見ぬ振りをしたり、止めようとしなかったりする集団に対しても、自分たちでいじめ問題を解決する力を育成することが大切である。
- 自分の問題として捉えさせる。
- 望ましい人間関係づくりに努める。
- 自己有用感が味わえる集団づくりに努める。
(3)保護者への対応
- いじめられている児童生徒の保護者に対して(被害児童生徒の保護者への対応)
相談されたケースでは、複数の教員で対応し、学校は全力を尽くすという決意を伝え、少しでも安心感を与えられるようにする。- じっくりと話を聞く。
- 苦痛に対して本気になって、精一杯の理解を示す。
- 親子のコミュニケーションを大切にするなどの協力を求める。
- いじめている児童生徒の保護者に対して(加害児童生徒の保護者への対応)
事実を確認したら速やかに面談し、丁寧に説明する。- いじめは誰にでも起こる可能性がある。
- 児童生徒や保護者の心情に配慮する。
- 行動が変わるよう教員として努力していくこと、そのためには保護者の協力が必要であることを伝える。
- 何か気付いたことがあれば報告してもらう。
- 保護者同士が対立する場合など
教員が間に入って、関係調整が必要となる場合がある。- 双方の和解を急がず、相手や学校に対する不信等の思いを丁寧に聞き、寄り添う態度で臨む。
- 管理職が率先して対応することが有効な手段となることもある。
- 教育委員会や関係機関と連携し、解決を目指す。
(4)関係機関との連携
「いじめ」は学校だけでの解決が困難な場合もある。情報の交換だけでなく、一体的な対応をすることが重要である。
- 教育委員会との連携
- 関係児童生徒への支援・指導、保護者への対応方法
- 関係機関との調整
- 警察との連携
- 心身や財産に重大な被害が疑われる。
- 犯罪等の違法行為がある場合
- 児童相談所との連携
- 家庭の養育に関する指導・助言
- 家庭での児童生徒の生活、環境の状況把握
- 医療機関との連携
- 精神保健に関する相談
- 精神症状について治療、指導・助言
7.近年増え続けている『ネットいじめ』への対応
(1)ネットいじめとは
文字や画像を使い、特定の児童生徒の誹謗中傷を不特定多数の者や掲示板等に送信する、特定の児童生徒になりすまし社会的信用を貶める行為をする、掲示板等に特定の児童生徒の個人情報を掲載するなどがネットいじめであり、犯罪行為である。
(2)ネットいじめの予防
- 保護者への啓発
- フィルタリング ・保護者の見守り
- 情報教育の充実 ・教科「情報」における情報モラル教育の充実
- ネット社会についての講話(防犯)の実施
(3)ネットいじめへの対処
- ネットいじめの把握
- 被害者からの訴え ・閲覧者からの情報
- ネットパトロールからの情報
- 不当な書き込みへの対処
8.重大事態発生への想定
(1)重大事態とは
- 児童生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある。
- 児童生徒が自死を企図した場合
- 精神性の疾患を発症した場合
- 身体に重大な障害を負った場合
- 高額の金品を奪い取られた場合
- 児童生徒が相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされている。
- 年間の欠席が30日程度以上の場合
- 連続した欠席の場合は、状況により判断する。
(2)重大事態時の報告・調査協力
学校が重大事態と判断した場合、県教育委員会に報告するとともに、県教育委員会が設置する重大事態調査のための組織に協力する。
(3)上記以外の「重大事態」
事実関係が明確にされていない段階であっても、その疑いがある場合は「重大事態」として対処する。
児童生徒や保護者から、いじめにより重大事態に至ったという申し立てがあったときは、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とは言えない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる。
(別紙1)「(別紙1)「認知した際の組織的対応」」(PDF:134kB)を参照